今年を代表するブームといえば、「キャンセルカルチャー」と(涙)「AI」は必ずノミネートされるでしょう。
その中で、必ず出てくると思い待ち構えていた(笑)ニュースが出てきました。生身の人間の代わりに、AI生成された架空の存在の「タレント」を起用したCMです。
ジャニーズ騒動を待つまでもなく、タレントが不祥事を起こしたら出演作品までがキャンセルされるご時世。商品CMに生身のタレントを起用するなんてリスクが高すぎます。
その点、AI生成された人物なら「ヤラない」し「ヤラない」し「ヤラない」(何をヤラないのかはお好きなものを入れてください)。「安心して」使うことができます。生身のタレントは、大半が遅かれ早かれ広告市場からキャンセルされてしまうかもしれません。
もう生身のタレントの価値は暴落してしまって、「サブスク」で広告起用できるサービスまで登場しています。
うーん、ここまで来ると「タレント」(才能)って何なんでしょうね…。
そんな思いと共に、件の伊藤園CMを観てみると…
年齢が縦横無尽に変わるCGキャラの演出はけっこう面白いと思うと同時に、「ほう」と感じたのが楽曲。サディスティック・ミカ・バンドの名曲「タイムマシンにお願い」の、1974年オリジナル音源ですね。ドラムを叩いているのは、生身の人間の宿命として今年亡くなられた高橋幸宏氏。
ヴォーカルは「ミカ・バンド」の名前の元になっている、当時リーダーの加藤和彦氏の妻だった福井ミカ氏ですが、この次の年に外国人プロデューサーとくっついてしまって加藤氏とは離婚という生々しい展開。
「サディスティック・ミカ・バンド」は何度か再結成していますが、その度に桐島かれん氏や木村カエラ氏といった、その時期ごとの「ミカじゃない生身の若い女性」をヴォーカルに迎えています。
そして、リーダー加藤和彦は、2009年に自ら命を断っているなど、悲哀に満ちた人間のドラマが色々と浮かんでしまう楽曲です。
これ、もしかして「ドラマ性ゼロ」のAIタレントに、意図的に「ドラマ性あふれる曲」を持ってきたのでしょうか?
選曲した人に、無意識にでもその意識があったとしたら、それは生身の人間への「未練」なのかもしれません。